需要の所得弾力性

需要の所得弾力性は、消費者の所得変化によって需要量がどのように変化するかを示す指標です。言い換えると、特定の所得の変化に応じて需要量がどれだけ変化するかの割合を示します。これは、需要量の変化率を所得の変化率で割ることで計算されます。

需要の所得弾力性とさまざまな財の種類

正常財

ほとんどの財は正常財であり、需要量と所得が同じ方向に動きます。つまり、所得が増加すると需要量も増加します。このため、正常財の需要の所得弾力性は正の値を持ちます。

劣等財

一部の財は劣等財であり、所得の増加によってその需要量が減少します。この場合、所得と需要量は逆方向に動くため、劣等財の所得弾力性は負の値を持ちます。典型的な例として、所得が増加すると公共交通機関の利用が減少し、代わりに自家用車を購入する傾向があります。

必需財

需要の所得弾力性は財によって大きく異なります。必需財は所得弾力性が低い傾向にあります。消費者は所得が低くてもこれらの財を購入するために経済的な努力をします。

19世紀の統計学者エンゲルによって発見された「エンゲルの法則」という法則があります。この法則は、家計所得が増加するにつれて、食品に費やす所得の割合が減少することを示しています。これは、総支出が増加しても、食品の所得弾力性が1未満であることを意味します。

高級財

高級財の場合、これとは逆の傾向が見られます。高級財は所得弾力性が高い傾向にあり、消費者は所得の変化に応じてこれらの財の消費を容易に変化させます。言い換えれば、所得が減少するとこれらの財をすぐに手放します。このため、高級財の所得弾力性は1を超えます。

需要の所得弾力性の計算方法

需要の所得弾力性は次のように定義されます:

\[ E_{d, ingreso} = \frac{\text{需要量の変化率}}{\text{所得の変化率}} \]

需要量の変化 (\(\Delta Q\)) と所得の変化 (\(\Delta Y\)) は、それぞれ初期値と最終値の差として計算されます。つまり:

  • \(\Delta Q = Q_{\text{inicial}} - Q_{\text{final}}\)、ここで \(Q_{\text{inicial}}\) は初期の需要量、\(Q_{\text{final}}\) は変化後の需要量を表します。
  • \(\Delta Y = Y_{\text{inicial}} - Y_{\text{final}}\)、ここで \(Y_{\text{inicial}}\) は変化前の所得、\(Y_{\text{final}}\) は変化後の所得を表します。

次に、需要の所得弾力性を需要量と所得の変化率で表すと:

\[ E_{d, ingreso} = \frac{\frac{\Delta Q}{Q}}{\frac{\Delta Y}{Y}} \]

さらに、両辺に \(\frac{Y}{\Delta Y}\) を掛けて \(E_{d, ingreso}\) を整理します:

計算式:

\[ E_{d, ingreso} \cdot \frac{\Delta Y}{Y} = \frac{\Delta Q}{Q} \]

次に、式を整理して \(E_{d, ingreso}\) を求めます:

\[ E_{d, ingreso} = \frac{\Delta Q}{Q} \cdot \frac{Y}{\Delta Y} \]

ここで:

  • \(\Delta Q\) = 需要量の変化
  • \(\Delta Y\) = 所得の変化
  • \(Y\) = 初期所得
  • \(Q\) = 初期需要量

この形式を使用すると、需要の所得弾力性を需要量と所得の変化データを用いて計算できます。

需要量が所得の増加に伴って増加する場合、所得弾力性は正の値になります。需要量が変化しない場合、所得弾力性はゼロです。また、所得の増加に伴って需要量が減少する場合、所得弾力性は負の値になります。

需要の所得弾力性の計算例

需要の所得弾力性を計算する具体例を見てみましょう。

次の条件を仮定します:

  • 初期需要量 (\(Q\)): 100単位
  • 最終需要量 (\(Q_f\)): 80単位
  • 需要量の変化 (\(\Delta Q\)): \(\Delta Q = Q_f - Q = 80 - 100 = -20\) 単位
  • 初期所得 (\(Y\)): 200貨幣単位
  • 最終所得 (\(Y_f\)): 150貨幣単位
  • 所得の変化 (\(\Delta Y\)): \(\Delta Y = Y_f - Y = 150 - 200 = -50\) 貨幣単位

これらの値を式に代入します:

\[ E_{d, ingreso} = \frac{\Delta Q}{Q} \cdot \frac{Y}{\Delta Y} \]

値を代入すると:

\[ E_{d, ingreso} = \frac{-20}{100} \cdot \frac{200}{-50} \]

各部分を計算します:

  • \(\frac{-20}{100} = -0.2\)
  • \(\frac{200}{-50} = -4\)

次に、両結果を掛け合わせます:

\[ E_{d, ingreso} = -0.2 \cdot -4 = 0.8 \]

したがって、需要の所得弾力性0.8であり、これは所得が1%増加するごとに需要量が0.8%増加することを意味します。