需要の交差価格弾力性
需要の交差価格弾力性は、ある財の価格変化に応じた別の財の需要量の反応を測定する指標です。つまり、ある財の価格変化が他の財の需要量に影響を与えることを示しています。具体的には、1つの財の需要量の変化率を、もう1つの財の価格変化率で割った値として計算されます。
需要の交差価格弾力性と財の関係
需要の交差価格弾力性が正か負かは、財が代替財か補完財かによります。
代替財
2つの財が代替財である場合、それらは互いに置き換えて消費されます。そのため、2つの財が代替財である場合、需要の交差価格弾力性は正になります。これは、1つの財の価格が上昇すると、もう1つの財の需要量が増加するためです。この場合、財1の需要量の変化率と財2の価格変化率は同じ方向に動きます。
補完財
一方、2つの財が補完財である場合、通常それらは一緒に消費されます。この場合、需要の交差価格弾力性は負になります。これは、1つの財の価格が上昇すると、もう1つの財の需要量が減少するためです。この場合、財1の需要量の変化率と財2の価格変化率は反対の方向に動きます。
需要の交差価格弾力性の計算方法
需要の交差価格弾力性は以下のように定義されます:
\[ E_{d, cruzada} = \frac{\text{財1の需要量の変化率}}{\text{財2の価格変化率}} \]
需要量 (\(\Delta Q_1\)) と価格 (\(\Delta P_2\)) の変化は、最終値と初期値の差として計算されます。つまり:
\[ \Delta Q_1 = Q_1^{\text{最終値}} - Q_1^{\text{初期値}} \]
\[ \Delta P_2 = P_2^{\text{最終値}} - P_2^{\text{初期値}} \]
これを絶対変化に基づいて次のように表現できます:
\[ E_{d, cruzada} = \frac{\frac{\Delta Q_1}{Q_1^{\text{初期値}}}}{\frac{\Delta P_2}{P_2^{\text{初期値}}}} \]
元の式の両辺に \(\frac{P_2^{\text{初期値}}}{\Delta P_2}\) を掛けると次の結果が得られます:
\[ \left( E_{d, cruzada} \cdot \frac{\Delta P_2}{P_2^{\text{初期値}}} \right) = \left( \frac{\Delta Q_1}{Q_1^{\text{初期値}}} \cdot \frac{P_2^{\text{初期値}}}{\Delta P_2} \right) \]
\(\frac{\Delta P_2}{P_2^{\text{初期値}}}\) と \(\frac{P_2^{\text{初期値}}}{\Delta P_2}\) を掛け合わせると相殺され、次の結果になります:
\[ E_{d, cruzada} = \frac{\Delta Q_1}{\Delta P_2} \cdot \frac{P_2^{\text{初期値}}}{Q_1^{\text{初期値}}} \]
ここで:
- \(\Delta Q_1\) = 財1の需要量の変化(最終値 - 初期値)
- \(\Delta P_2\) = 財2の価格の変化(最終値 - 初期値)
- \(P_2^{\text{初期値}}\) = 財2の初期価格
- \(Q_1^{\text{初期値}}\) = 財1の初期需要量
この式は、価格と需要量の変化データを用いて需要の交差価格弾力性を計算する際に便利です。
需要の交差価格弾力性計算の例
需要の交差価格弾力性を計算する具体例を見てみましょう。
次の条件を仮定します:
- 財1の初期需要量 (\(Q_1^{\text{初期値}}\)): 100単位
- 財1の最終需要量 (\(Q_1^{\text{最終値}}\)): 70単位
- 財1の需要量の変化 (\(\Delta Q_1\)): \(Q_1^{\text{最終値}} - Q_1^{\text{初期値}} = 70 - 100 = -30\) 単位
- 財2の初期価格 (\(P_2^{\text{初期値}}\)): 25単位
- 財2の最終価格 (\(P_2^{\text{最終値}}\)): 20単位
- 財2の価格の変化 (\(\Delta P_2\)): \(P_2^{\text{最終値}} - P_2^{\text{初期値}} = 20 - 25 = -5\) 単位
これらの値を式に代入します:
\[ E_{d, cruzada} = \frac{\Delta Q_1}{\Delta P_2} \cdot \frac{P_2^{\text{初期値}}}{Q_1^{\text{初期値}}} \]
値を代入すると:
\[ E_{d, cruzada} = \frac{-30}{-5} \cdot \frac{25}{100} \]
各部分を計算します:
- \(\frac{-30}{-5} = 6\)
- \(\frac{25}{100} = 0.25\)
最後に、両方の結果を掛け合わせます:
\[ E_{d, cruzada} = 6 \cdot 0.25 = 1.5 \]
したがって、需要の交差価格弾力性は1.5となります。これは、財2の価格が1%上昇すると、財1の需要量が1.5%増加することを意味します。
この結果から、財1と財2は代替財であると結論付けられます。交差弾力性が正の場合(この例では \(E_{d, cruzada} = 1.5\))、1つの財の価格上昇が他の財の需要増加につながることを意味します。