点弾力性と弧弾力性
点弾力性は需要曲線または供給曲線の特定の点における弾力性を評価し、弧弾力性は一定の範囲内での弾力性を測定します。
点弾力性と弧弾力性の違い
点弾力性は需要曲線の特定の点で測定される弾力性であり、特に線形の需要曲線では測定する点によって値が異なります。つまり、測定する点が異なれば弾力性も変化します。一方、弧弾力性は一定の価格範囲における弾力性を測定するもので、需要曲線や供給曲線の特定の点ではなく、ある範囲内での弾力性を評価します。つまり、弾力性を計算する際に、2つの点(初期価格と最終価格)を取るのではなく、それらの平均値を使用します。
点弾力性
需要曲線の特定の点における価格弾力性は、次の式で計算されます:
\[ E_p = \left( \frac{\Delta Q}{\Delta P} \right) \left( \frac{P}{Q} \right) \]
- \(E_p\): 点弾力性。
- \(\Delta Q = Q_2 - Q_1\): 2つの近い値 (\(Q_1\) と \(Q_2\)) 間の需要量の変化。
- \(\Delta P = P_2 - P_1\): 2つの近い値 (\(P_1\) と \(P_2\)) 間の価格の変化。
- \(P\): 弾力性を評価する点の価格 (\(P_1\) または \(P_2\)、文脈により選択)。
- \(Q\): 価格 \(P\) に対応する需要量 (\(Q_1\) または \(Q_2\)、文脈により選択)。
この方法では、計算する点の周辺で小さな変化 (\(\Delta Q\) と \(\Delta P\)) を使用し、参照する価格と数量を状況に応じて選択します。
弧弾力性
弧弾力性は、需要量の価格に対する感度を需要曲線上の一定範囲で測定するもので、次の式で表されます:
\[ E_a = \left( \frac{\Delta Q}{\Delta P} \right) \left( \frac{\bar{P}}{\bar{Q}} \right) \]
- \(E_a\): 弧弾力性。
- \(\Delta Q = Q_2 - Q_1\): 2点間の需要量の変化。
- \(\Delta P = P_2 - P_1\): 2点間の価格の変化。
- \(\bar{Q} = \frac{Q_1 + Q_2}{2}\): 平均需要量(\(Q_1\) と \(Q_2\) の算術平均)。
- \(\bar{P} = \frac{P_1 + P_2}{2}\): 平均価格(\(P_1\) と \(P_2\) の算術平均)。
この式は次の2つの要素で構成されています:
- \(\frac{\Delta Q}{\Delta P}\) は、価格 (\(P\)) の変化に対する数量 (\(Q\)) の変化を測定します。
- \(\frac{\bar{P}}{\bar{Q}}\) は、価格と数量の平均値を使用して変化の規模を調整し、分析の対称性を確保します。
この方法は、特定の点の弾力性ではなく範囲を考慮するため、価格と数量の変化をより正確に評価できます。
弧弾力性を用いた需要の価格弾力性の計算例
ある商品の需要量が 150 単位 (\(Q_1\)) から 100 単位 (\(Q_2\)) に減少し、価格が $10 (\(P_1\)) から $15 (\(P_2\)) に上昇したとします。
ステップ 1: 変化量 (\(\Delta Q\) と \(\Delta P\)) を計算
\[ \Delta Q = Q_2 - Q_1 = 100 - 150 = -50 \] \[ \Delta P = P_2 - P_1 = 15 - 10 = 5 \]
ステップ 2: 平均需要量 (\(\bar{Q}\)) と平均価格 (\(\bar{P}\)) を計算
\[ \bar{Q} = \frac{Q_1 + Q_2}{2} = \frac{150 + 100}{2} = 125 \] \[ \bar{P} = \frac{P_1 + P_2}{2} = \frac{10 + 15}{2} = 12.5 \]
ステップ 3: 弧弾力性の公式に代入
\[ E_a = (-10) \times (0.1) = -1 \]
弧弾力性は \(-1\) であり、需要は単位弾力性を持つことを示します。